北海道テレビ開局35周年記念
水曜どうでしょうpresents
水曜天幕團
旗揚げ公演2003
蟹頭十郎太

〜ストーリー編・前編〜

 


まず、あらすじ。
ここここ参照です(笑)


この物語の序章とも言うべき、
幼い十郎太と綾姫が国を追われて逃避行し、
生き別れになるまでの件。


どうやって舞台で表現するのかと興味があったのですが、
主に「口上」という手法でなされていました。




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舞台は暗転、
暗闇の中でゆっりとしたリズムを叩く天神太鼓の音と共に
客席の後ろから続々と舞台に登る、平岸天神の踊り子達。
よさこいソーランの音楽が鳴り響き
激しいダンスの中、
舞台後ろの扉が開き
踊り子をかき分けるように
扇子で顔を覆い、水色の着物に身を包んだ≪講談師≫大泉洋の登場。


拍手喝采の会場。
「いよっ!」「待ってました!」。歌舞伎ばりの掛け声も聞こえる。


掛け声に応えるかのように
講談師「いつもはブラウン管の内側で跳ね回っておりますが、
今宵この天幕團にて、生身で皆様のお目にかかります!」


そんなような意味の事を言っていたように思います。


文机の前に座り、扇子を打ち鳴らして
スライドで映し出される人物像や相関図などに合わせて
講談師の口上。


鷲津半角斎、十郎太、斎藤鬼虎と巧みに声色を使い分けて
口上だけで涙をも誘う演技を見せる「大泉洋」。
(因みに斎藤の交渉役は「柳生博」と言う。)


そこには、水曜どうでしょうのいつもの大泉酔うやすずむしやよういずみおうからは
想像もつかない姿があったはず。


どうでしょうは好きだけれど
NACSやイナダの芝居を見るまででもなく、今回初めて彼らの舞台を目にした。
というファンの方々は
大泉洋の本職、彼の真髄を見たのではないだろうか。
と言うのは買いかぶりな大袈裟表現だろうか。
いやそれよりも何よりも、
道外から多数いらっしゃった観客の方々は、
生身で動き回り肉声を響かせる大泉洋の姿に、それだけて感動されてたのではないだろうか。


「だろうか」が多いのではないだろうか私。





口上は幼い二人が手に手を取り合って城から逃れる件まで進んだ。





客席横から武具を手にした武者(佐藤重幸・藤尾仁志・河野真也・川島直樹・西村匡弘)が現れる。
血走った目つきで、鷲津十郎太と綾姫を探し出せ、その場で殺せと高らかに叫ぶ。
影・十郎太(北野雄大)と
影・綾姫(藤村風花)の登場。
不気味な雷が鳴り響く鷲津の森で、斎藤の追っ手に見つかってしまった。
客席の上から組頭の安藤弥七(音尾琢真)が現れて、
十郎太に詰め寄る。


弥七「この手を見ろ。
わしは今日、この手で5人殺した。
お前に人が斬れるか。」


剣を抜く幼い十郎太。


「行け。その手を決して離すな。
生きろ、生きるのだ十郎太!」


幼い兄弟を見逃す弥七。
気でも違えたか、と手下に囲まれる。





口上は続く。


弥七の言葉を念じるように決して妹の手を離すことなく追手から逃れ続ける十郎太。
喉の渇きを訴える妹の為に、
沢に水を汲みに行き、ほんのひととき手を離した隙に
妹の姿は消えていた。


それから13年。


鷲津十郎太から蟹頭小十郎と名を改めた十郎太は、
頭髪の手入れに頓着する暇さえなく
逃亡と妹の捜索に明け暮れた故、


伸び放題のクセ毛は四方八方に好き勝手を向き、
それを先端でぎっゅと結んだ姿は、まるで頭に大きな蟹を乗せているよう。


誰もこれがかの鷲津十郎太であるとは気付きもしないのでむしろ好都合だった。


口上はここまて。





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神州国のとある村。


村人の清兵衛(藤尾仁志)が、名主(安田顕)に助けを求めに来た。
盗人に、金と食い物を出せと
娘のお千代(藤村風花)を人質にとられたと言う。
軽く倒してやると息巻く村人(河野真也)だが、
お千代を肩に担いでハイテンションで駆け抜けていく
バサラのような盗っ人侍(森崎博之)を見て怖気づく。
お千代の母、おせい(宮崎奈緒美)がわずかばかりの食料を差し出しても納得しない。
まるで、本当に求めているものは食い物や金ではない
他の何かのようだ。


とうとう、娘を放してくれとすがるおせいを斬りつけた。


自分の所業ながら、戸惑いを隠せない盗っ人。


そこへ派手な登場のSEと共にステージ奥の扉が開き
奇妙な頭髪の侍(大泉洋)が現れる。
唖然とする一同。


侍は、自分は刀を抜きたくない、と、お前も色々あったのだろうと
盗っ人を説得しようとするが、剣を収めない。
「もう引き返せない・・・か。ならば仕方ない」
とうとう刀に手をかけ、鞘から抜く。


が。
剣ではなく花束が出た。


それを見て、堰を切ったように盗っ人が侍に斬り付けようとするが、
侍は刀を抜くことなく、盗っ人を倒す。


その一部始終を見ていた旅の侍・安藤源八(音尾琢真)が登場。
盗っ人に縄をかけるよう促し、
侍の腕を讃えて名を尋ねた。


奇妙な頭髪の侍は、蟹頭小十郎と名乗った。


自分も剣の腕に覚えがある安藤は
小十郎に対決を申し出るが、
小十郎は「この剣は人を斬るためにあるのではない。」と断る。


気絶している盗っ人の処分をどうすると問われ、
名主は「暖かい布団で寝かせて、働かせてメシを食わせば根性も真っ直ぐになるだろう」と提案。


名主は、2人の侍に「明日の姫様の婿取りの儀に参加するために来たのか」と問うが、
2人には初耳だった。
出世欲の強い安藤はその話に喜び、
「わしがこの国の主になったら、もっともっと国を大きくして豊かにしてやる」と名主に語る。
しかし名主は「私らはこのままで充分」と
現神州国の、名君と謳われた当主・無二斎の治世に満足している様子。


名主は2人の侍を自宅に招くというが、
「探し物」に暇が無い小十郎は辞退する。
去りがけに、一同に「この国に15.6の年頃の娘はおるか」と問うが、
特徴を問われても答えられない。
「いや、いいんだ」と場を後にする小十郎。


安藤は、小十郎の残したマジックの花を嬉しそうに懐にしまい込んで
名主の家へ案内された。





小十郎と安藤にいいだけ太腿を平手打ちされて
とっくに目覚めていた盗っ人だが、ふてぶてしく口を開かない。
日も暮れた頃、村人が食事の差し入れにやってきたが、そっぽを向く。
村人が口元まで握り飯を運んでやると、
盗っ人は泣きながら握り飯をほおばった。





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ところかわって神州国の城内。


無二斎の忠実な家臣、佐伯重定(佐藤重幸)は
無二斎の一人娘である桜姫の、婿取りの儀が迫っている事に感無量だった。


桜姫(三輪ひとみ)と侍女の松(小橋亜樹)が登場して、
無二斎の着替えを待っている。
やっと、佐伯の打ち鳴らす太鼓にあわせて無二斎(森崎博之)登場。
後妻の築山(宮崎奈緒美)、無二斎と築山の間に生まれた千代丸も揃い婿取りの儀について話し合う。


無二斎は、
国の行く末を任せられる、強い運命を持つ者を桜姫の婿に迎えたいと考え、
婿取りの儀を取り決めたと言う。
父の意見に頷く桜姫。


話が済むと、桜姫は
毎日欠かさない白竜神社への参拝に出かけた。
10年前、6歳の時に
無二斎の前妻である母を亡くした翌日から
16歳になろうという今日まで、
一日も参拝を欠かしたことはなかった。





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白竜神社への道すがら、
松に「最近、築山様の事で何か聞いてはおりませぬか」
と問われる。
築山様は相変わらずお優しい方だけど何かあったのかと逆に問われて
口ごもる松。
嘘が嫌いな可憐で凛としたたたずまいの桜姫は、
嘘をつくと舌を抜きますよ、と巨大なペンチを取り出し松に正直に言うよう促す。
が、
突然倒れる桜姫。
助けを呼びに松が去ると、
桜姫は不思議な老婆(野村千穂)と亡き母(河野真也)の幻影を見る。


老婆と母の幻影は交互に語る。


母は、死に際に桜姫を枕もとに呼んでこう話していた。


そなたはこの国に実りと平和をもたらす者であるけれど、
そなたが16歳になった時、
沼の底から黒い龍が現れて災いをもたらす。
これから毎日白竜神社に参りなさい。
そうすれば、16歳になる前日に
老婆が現れてその時必要な事を言ってくれる。


母の幻影と老婆は、声を重ねて
数奇な運命をたどる桜姫にこう言った。
「生きなさい、生きるのです! 桜姫。」





「私をお守りください・・・」とうわごとで呟く桜姫のもとに
松は通りがかりの安藤を連れてきた。
城に戻るには数百段の石段を下らなければならないと聞き、
一度抱えた姫を降ろして、松に手伝わせて肩にもたせかける。





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その頃。(次の日か?)


佐伯が、「婿取りの儀」のお触れを持って、城下中に触れ回っていた。
ひやかしてついて回る町人(藤尾仁志・河野真也)の最後尾に、
小十郎の姿。


「選考の種目にモノマネはないのか」。
「ない」と軽くあしらわれても、
「やっていいか」。


佐伯が仕方なしに許可すると、得意のモノマネを披露する。
芳しくない反応。(という設定だけど役者が後ろを向いて肩を震わせて笑っていた)
更にもう一度披露。


これだけしつこくついて回っているのに
婿取りに参加するつもりはない、と言うと
佐伯に「ひやかしか」と叱咤されるが、
「そうではない」と、一行に、探し物について尋ねる。
15.6の娘という特徴だけでは分かり兼ねる、と、ここでもいい反応はない。


13年前に生き別れたのだと聞いた町人が、
再会できた時にどうやって確認するのだと尋ねると
小十郎は
「手だ」と答えた。


顔や背格好は分からなくなっていても、
あの握り締めた手のぬくもりだけは覚えている。


町人は、佐伯に「国中にお触れを出して探してやれ」と言うが、
小十郎は辞退する。
小十郎にはおおっぴらに探し物をできない理由がある。


そして一行と別れた小十郎は、
不思議な旅の法師(森崎博之)と言葉を交わす。


法師は、この美しく豊かな神州国を
「呪われた国」と呟いた。
小十郎が理由を問うと、
法師は
「あの城の天守閣に、もう一月(曖昧・・・)も傘のような雲がかかっている。
城には物の怪が住んでおる。
明日の婿取りの儀までに雲が晴れぬと、恐ろしい事が起こる」と言った。


旅の法師は、これから四国に巡礼参りに旅立つという。
小十郎は、「四国にも物の怪はたくさんいるから気をつけろ」と法師を送り出す。


(何より姫の年頃も気になってはいたと思うけど)
法師の言葉を聞いて興味が沸いた小十郎は、明日の婿取りの儀に参加する事にした。


城下には不気味な雷が鳴り響いていた。





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婿取りの儀 当日。


様々な試験を通り、最終試験の剣術に残った4人の中に
小十郎と安藤の姿があった。
小十郎の頭を認めるたびに慄く無二斎。
それぞれ、佐々木正綱(藤尾仁志)と山名権兵衛(河野真也)と対峙して勝ち残り、
小十郎と安藤の対決となるが、
互角の腕の2人は勝負がつかない。


2人を無二斎が褒めたたえる。
そこに家臣の沼部黒龍丸(安田顕)が進言する。
「木刀ではなく真剣で勝負してみてはどうか。」
姫に意見を求めると、
真剣で勝負していただきましょう、
しかし勝負は明日に持ち越します、今日はお2人に城内に泊まってもらいましょうと言う。


小十郎は、「モノマネはどうです」とまた言い、
許可を得て披露する。
「よく分かりません。明日はやはり真剣での勝負にしましょう」と
あっさり却下される。


松が「昨日助けてくださったのはこのお侍様です」と説明すると
安藤は「私が城まで姫を抱えて参りました」とうそぶいた。
松が嘘をばらすと、
桜姫は「嘘をつくと頭をかち割りますよ」と涼しげにハンマーを取り出す。
「嘘を申しておりました」と自供する安藤。
桜の枝をを授けながら
「そのお目はどうなされました。可愛そうに、生まれつきお目がお悪いのですか。
あなた様のお目の病が治りますように。」と声を掛ける。


安藤は、複雑な面持ちで桜を受け取った・・・。


小十郎には、
「変った髪でいらっしゃいますのね。散髪には行かれないのですか」と声を掛けた。
小十郎は、探し物に急がしくて髪に頓着している暇がないと説明した。
「あなた様のお探し物が早く見つかりますように」と
桜を授けた時に、わずかに触れた二人の手。
2人は、一瞬何かを思い出したように目を見合わせた。





桜姫は、
2人に一国を治める城主の気持ちを味わってもらおうと、
天守閣に宿泊させることを提案する。
反対する黒龍丸に
「お黙りなさい!」と桜姫は強く咎めた。





2人は侍女(野村千穂)に案内されて、許された天守閣に足を踏み入れた。





黒龍丸の態度に不審を抱いたのか、
無二斎が
「名はなんと言ったかのう。最近歳の所為か物忘れが激しくてな。気を悪くせんでくれ」と言う。
静かに重々しく名乗る黒龍丸。





天守閣では、2人が城下を見下ろし感慨にふけっていた。
そこで安藤は、
小十郎が婿に立候補するためではなく、
昨夜の法師の言葉が気になって城に興味を抱いたために婿取りの儀に参加したと聞き
「おぬしには一国一城の主になりたいという野心はないのか」と驚く。


そんな安藤も、
そう言えば・・・と姫について聞いたある事を話す。


白竜神社で姫と会ったのは実は偶然ではない。
名主の家に世話になった時、
姫様の人となりを聞いたらば、名主はこんな話をした。


 姫様は毎夜欠かさず白竜神社に参っているので
 白竜神社へ行けば姫様に会うことが出来る。
 母上が亡くなられてから10年間、毎日参拝を欠かされた事がないので、
 今夜もきっと。


それを聞いてあの夜、白竜神社へ出掛けたのだと。


10年と言えば、姫様が参拝を始めたのはずいぶんお小さい頃だ。
神社への石段は登ってみると相当な数がある。
そんな険しい道をそんなに小さな子供が毎日通うとは
相当な決心だ。
姫様は一体どんな誓いを立てたのだろうと、
安藤は疑問を抱いていた。





天守閣には、相変わらず不気味な暗雲が立ち込めている。
雷が低く轟く。


侍女が、酒宴の用意が出来たと二人を呼びに来た。
いそいそと天守閣を後にする安藤。
小十郎は、空を眺めて
「一雨きそうだな。下々の者が濡れなければよいがのう・・・」と、


足元の上手客席一列目を舐めるように見回した(笑)


そのとたんに、舞台と一列目との間に
容赦なく降り注ぐ雨。





冷たい雨の中、
黒龍丸が甲冑を身に纏い、槍の素振りをしていた。
そこに出くわして驚く佐伯に、
「戦に備えて毎日甲冑を身につけている」と説明する。
佐伯は、
この平和な神州国で戦などありえないと言う。
分かりました、と従順な受け答えをする黒龍丸。


しかし佐伯が去ると、腰抜けになりさがったこの国の平和を罵る。
国の外から婿を取る事など納得のいかない黒龍丸。
それだけではない、どす黒い陰謀を胸に秘めていた。





--- 第一部 完 ---





約15分の休憩。


12日には、スタッフさんが
客席中の道外勢、道内勢、市内勢の比率アンケートを取っていたらしい。
ちょっとしたお楽しみタイム。





続きはまた次回。





               (2003/11/24 UP、12/4 追記)