北海道テレビ開局35周年記念
水曜どうでしょうpresents
水曜天幕團
旗揚げ公演2003
蟹頭十郎太
〜ストーリー編・後編〜
--- 第二部 ---
さぁここから記憶が怪しくなってきた。
当然と言えば当然だけど
台詞の一字一句まで覚えちゃいませんので、書いてる言葉は雰囲気です。
さらっと読んで細かい事は忘れてください。
DVDが発売したら特に忘れてください(笑)
黒龍丸に呼び出されて、夜陰に隠れてやってきた築山。
人目を気にする築山をからかうように
馴れ馴れしい口調で築山を呼び捨てる黒龍丸。
無二斎は溺愛する桜姫に跡を継がせたいと考えている。
築山は元々、男子が生まれても後継ぎにしないという条件で嫁いできた。
しかし可愛い我が子を出世させたくない母親はいない。
そんな事は考えていないと否定する築山の胸のうちを見透かすように
黒龍丸は、母の情につけこんで築山をそそのかす。
姫が婿をとってしまってからでは手遅れだ。
今夜しかない。
自分は桜姫を殺すから
築山には、毎夜無二斎に差し入れる白湯に混ぜて毒を盛れと、包みを手渡す。
戸惑いの色を隠せないまま築山が去ると、黒龍丸は不気味に高笑いする。
良家育ちのお嬢さんでさえ、ちょっと後押ししてやれば
我が子の為ならば人殺しもいとわない。
人間の欲とはかくも恐ろしい。
「しっかりやれよ築山。我らの子、千代丸のために。」
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酒宴から天守閣に帰ってきた安藤と小十郎。
お互いをカニ玉とか、
カンパチとかアンコウとか出世魚とか白々しく言い間違えながらも
次第に打ち解ける2人。
「男に生まれたからには一国一城の主を目指すのが当然」と言い、
いつも強気な姿勢を見せていた安藤だか、
ぽろりと自分の身の上を話しだす。
自分の父は人助けをしたばかりに謀反の罪で打ち首になり、
それ以来自分も国を出て旅侍となった、
ばかな親父だ・・・と。
口で責めながらも、命がけで人を守った父親を
誇りに思っているように感じる。
そんな安藤を見て、
小十郎は、お前になら話してもいいと
自分も、決して人に話さなかった身の上を聞かせる。
自分の父はとある国の城主だった。
隣国のだまし討ちに遭い、国は滅びて、幼い妹と2人で追手から逃れた。
森で追手に追いつかれたが、
そこでとある武士に見逃してもらい、生き延びる事が出来た。
しかしその後、妹とは生き別れた。
小十郎の話を聞いているうちに、みるみる顔色が変る安藤。
その国の名は・・・。
お前の本当の名は。
何も知らない小十郎は、
鷲頭国の鷲頭十郎太と答える。
それを聞いた安藤の口から、
13年前、小十郎が鷲津の森で武士から聞いた言葉が
一字一句違える事無く語られる。
「この手を見ろ。わしは今日この手で5人斬った。
お前に人が斬れるか。
行け。決してその手を離すな。
生きろ、生きるのだ十郎太! 」
小十郎は剣に手をかけ怒号する。
「お前、斎藤の追手か!
まだ俺達を追いかけるのか・・・!」
安藤もまた、泣き震えながら怒号する。
「お前を助けた斎藤の武士、安藤弥七は俺の父だ!
お前達兄弟を見逃したばかりに、俺の父は打ち首になって死に果てた!!」
いつか鷲頭十郎太を見つけたらこの手で斬ってやろうと
父の敵を撃つ機会を待っていた安藤だったが、
「今の俺には、親父が命がけで守ったお前を斬ることはできない」と言った。
その時小十郎の胸には
乱世こそ人の世 人として人間らしく生き抜いてくれ
という父の遺言が思い出されただろうか。
愕然として、
剣に掛けた手を床に着いて
静かに深く土下座する小十郎。
「・・・すまぬ。」
しばらくわなわなと震えていた安藤。
全て水に流すと云わんばかりに
唐突に姫の話を切り出す。
白竜神社で倒れた姫を抱きかかえて城までお連れした時、
姫はずっと「私をお守りください」とうわごとで唱えていた。
その様子を見たとき、
この国の領主になりたいのはもちろんだが
婿となってこの姫様を自分の手でお守りしようと誓った、と。
そこに血相を変えた松が飛び込んでくる。
姫様をお助けください!
それから、安藤様が姫様を抱きかかえて来たというのは嘘でございます!
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桜姫の寝所。
黒龍丸がひざまづき、床についている姫に進言する。
今夜は城に得体の知れない輩が入り込んでいる故
無二斎様より姫の身辺警護を申し付けられました。
眠っておられるか。大きゅうなられましたなぁ・・・と
姫の床ににじり寄り
すらりと剣を抜いて床に突き刺した。
しかし寝床は人型が置いてあるだけの、もぬけの殻。
怒り狂い、衝立を蹴飛ばし、
「どこへ行った!桜姫!」
と唸る黒龍丸。
騒ぎを聞いて駆けつけた佐伯に言う。
姫があの侍2人にさらわれた。
どこの馬の骨とも知らぬ者を城になど入れるからこんな事になる。
2人を見つけたら殺せ。
もちろんです!と答える佐伯に、黒龍丸は更に言った。
「姫も殺せ」
「何を言う?」
「姫を殺せ、と言った」
謀反じゃ!と
へっぴり腰で剣を構えた佐伯はあっさり斬り倒された。
黒龍丸が、
暗い沼の底から姿を見せよ、我が弟・蝦蟇丸!
と名を呼ぶと、
不気味な蝦蟇のいでたちの怪物が現れた。
「この男の体をお前にくれてやる」
蝦蟇丸が黒い外套を広げて佐伯の体に覆い被さると
外套の中の蝦蟇丸は忽然と消えて、佐伯にすりかわっていた。
(イリュージョンっ)
蝦蟇丸は佐伯の体を乗っ取った。
「お前は築山がうまくやっているか様子を見て来い。」
佐伯の姿の蝦蟇丸は、
築山と無二斎の元へ向った。
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天守閣。
松は、先ほど目撃した築山と黒龍丸の密会で聞いた
恐ろしい計画を安藤と小十郎に聞かせる。
姫は、危険を察知した松が既に連れ出して
2人の元に伴ってきていた。
姫を安全な白竜神社に連れ出して欲しいと二人に託し、
自分は築山を止めようと、無二斎の元へと急ごうとする。
どうしたの、と問い詰める桜姫に
松はきっぱりと言う。
「なんでもございません。松は嘘を申しておりません。なんでもございません!」
無二斎の元へ白湯を届ける築山。
毒が気がかりで上の空の築山に
無二際は語りかける。
本当ならば千代丸が跡取となるはずなのに、築山にはすまない事をした。
しかしふびんな桜姫にどうしても跡を継がせたかったと。
毒をそっと取り出した築山は驚く。
片手いっぱいほどの大きく丸い、緑色の物体。
どうしたって白湯の椀にも入りきらない。
迷った挙句
「白湯でございます」とそ知らぬ振りで(?)差し出す。
驚く無二際に「まりもです」と苦し紛れの返答。
そこに佐伯の姿の蝦蟇丸がやってきて
「うまそうなまんじゅうですなぁ」と無二際に勧める。
松も駆けつけ、無二際に「それは毒でございます」と止める。
「毒だ」「まんじゅうだ」と押し問答する2人に挟まれて戸惑う無二斎、
ならばお前が食うてみよ、と佐伯に渡そうとする。
困惑する佐伯。
横から築山が毒を奪い取り、
無二際に毒を盛ろうとした事を詫びて
これだけは信じてください、と
千代丸は誰が何と言おうと無二斎の子である事を告げ、自分で毒を飲む。
いや食べる。
結果的に毒の作用ではなく喉詰まりが直接の死因になったと思われる。
亡骸を抱いて「すまない・・・」と謝り続ける無二斎と、嘆く松。
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白竜神社に辿り着いた桜姫・安藤・小十郎。
話は姫の身の上話へと。
私はお父上の本当の子ではない。
昔、病気で本当の子である姫を亡くして落胆していた無二斎の妻が
、
お告げの知らせの通りに白竜神社へ出向くと、
亡き姫にうりふたつの桜姫が一人神社に佇んでいた。
その子を引き取って自分の子として育てたのだ。
何故そこにいたのかは覚えていないという桜姫。
どうしてそこにいたのです。
あなたはどこから来たのですか。
誰かに「話すな」と止められているのですか。
何か感ずるものがある小十郎に懇願されて重い口を開く。
その日私は綺麗な着物を着せてもらってはしゃいでおりました。
幼い自分の晴れの嫁入りとなるはずだった日の出来事から話し始める。
城はあっという間に炎に包まれて
兄に手を引かれて城から逃げ延びた。
私がいけなかっのです。
喉が渇いたと訴えた自分のために、兄が沢に水を汲みに行って
ほんの一時離れ離れになった隙に
山賊に連れ去られた。
しかし幼い自分に価値はなかったらしく、着ていた高価な着物だけを盗られて
白竜神社に打ち捨てられた。
そこに無二斎の妻が現れて、自分を拾ってくれた。
姫の告白を聞くうちに、
悟った安藤は後ろを向いて天を仰ぎ、じっと耳を傾ける。
信じられない面持ちで話を聞く小十郎。
いつか兄様が迎えに来てくれる日を信じて生き延びてきた。
どうやって兄者を確かめるのです。
「手です。」
顔は忘れても、ずっと握り締めてくれていた手のぬくもりは決して忘れない。
そなたの国は。
下総の鷲津国。
そなたの本当の名は。
綾と呼ばれておりました。
兄者の名は。
鷲頭十郎太。
感涙で立ち尽くす小十郎に、桜姫は言った。
そう言えば、あなたさまのお探し物は見つかりましたか?
「ええ。たった今見つけました。」
静かに桜姫に歩み寄り、そっと手を取り小十郎は言った。
「探したぞ・・・。 綾。
よくぞ生きていてくれた・・・!!」
感動の再会を果たして抱き合う綾と十郎太。
そこにおどろおどろしい怪音が轟き、
白い煙が立ち込める。
見るも恐ろしい、巨大な黒い龍が現れて口を開くと
中から黒龍丸が出現。
先駆けて小十郎に飛び掛っていった蝦蟇丸は
一蹴されてあっと言う間に倒れる。
妹を安藤に託して、黒龍丸と対峙する小十郎。
舞台に再び雨が降る。
妹を守るため、
初めて父の形見の備前長船を抜く小十郎。
斬られるのはいやじゃ。痛いのは嫌いだ。わしを斬ったら恨むぞ
と小十郎に迫る黒龍丸。
緊迫の斬りあいの末、小十郎は黒龍丸を倒す。
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明るい城下町。
松が、町人に問われて嬉しそうに
桜姫の婿が安藤に決まった事を報告する。
あの旅のお侍さんの探し人が見つかった事も。
そしてまた旅に出る事を。
城の門。
旅立つ小十郎改め鷲津十郎太を
安藤・桜姫夫妻が見送る。
無二斎は引退し、千代丸は2人の子として育てられる事になった。
別れを惜しむ桜姫。
十郎太は、
「今まで綾を探す事を生きがいとしてきたけれど、
目標を見失ってしまった。
しかしどこかにわしを待っている人がいるかもしれない。
それを探しにまた旅に出る」と言う。
安藤は、
「鷲津とはしっくりこない。おぬしにはやはり蟹頭という名が似合う」と言う。
では・・・と
蟹頭十郎太、これにて失礼つかまつる!
と、威勢良く舞台を駆け下り、客席を抜けて最後尾まで走りぬけ
「あばよ!」と手を振った。
蟹頭十郎太、これにて終演。
(2003/12/12)