北海道テレビ開局35周年記念
水曜どうでしょうpresents
水曜天幕團
旗揚げ公演2003
蟹頭十郎太
〜感想編〜
感想を書くには物語を思い出さないと書けない。
思い出すにはストーリーを書き出すのが一番。
そんな訳でまたも懲りずに危険を冒して細かくストーリーを書きましたが、
間違っているところは、私の記憶ではそういう話だったんだという事でご愛嬌。
と茶を濁します。
感想。
まず、テレビ屋が作った芝居というのは芝居としてどうだったのか。
正直言って、見た目の派手さに内容が追いついてなかった。
特に最後はあっさりしすぎていて、
黒龍丸って一体なんだったんだ・・・と思ってしまった。
(最初のアンケートに「黒部」と書いた大ばか者)
なら最初の台本にあったと言う、龍が盗人を食っちゃうシーンもありでよかったのでは。と言うか観たい、それ。
だってあのでっかい龍、すぐいなくなっちゃうんだもん。
・・・あんなでっかいの、どこに保管してあるんだろう、今。
本当に黒龍丸はなんだったのか。
姫が16になった時に、
沼の底からいでたち、災いをもたらすのが
黒い龍「沼部黒龍丸」。
龍の化身だったわけね。
でもなんで姫を狙うのか分かんない。
姫が国に実りと平和をもたらす存在だから?
そしてなんで
「俺を斬るなよ。斬られるのはいやじゃ。斬ったら恨む」としつこかったのか。
それがよく分からん。
やられ方もあっさりすしぎている。
そうだ、殺陣も思ったより少なかった。
稽古している人にとってはあれでも精一杯なんでしょうが
もちょっと見せ場があるかと思ってた。
そして
姫に投げかけられた「生きよ」という言葉に説得力がなかった。
時代と運命に翻弄されて懸命に生きている姫ではあるけど
運命を自分で掴み取るような巡り合わせがあるわけでもないので
なんで「生きよ」?と。
きっとよくある設定なのだろうけど、現代の私たちには共感が難しい戦国時代のお話。
兄弟の思いを考えると痛いほど悲しいお話だけど、
思ったよりはじんと来ない。
そしてよくある設定だけに、
芝居として見せるにはもう一ひねり、二ひねり、
思いもよらない結末などが欲しかったり。
さぁここまで読んで「なにをこのぉ」と思われた方もいらっしゃるかもしれない(笑)
けどめちゃくちゃ楽しかったです。
芝居としてどうのこうのと言ったけど、
でも芝居の一番大事なものが全てあったように思います。
生の臨場感、一体感、楽しさ。
いくらストーリーが完璧でも、それがない芝居は観ててもきっとつまらない。
そして楽しませる事はやはり一流だと思いました。
舞台はあまりテンポが良すぎるとついていけなくなるし、
間合いが多いと飽きてしまう。
演出家の頭の中では、VTRを編集するように無駄をこそげ取っていったのでしょうか。
観ていて飽きなかったです。
普通の舞台ではあまり変化球が許されない(多分)ところを
この芝居だから逆手にとってうまく取り入れて許された。
ってのも多分にあると思います。
だって祭りだから。
そう、祭りなんですよ。公式でふじやんが散々言ってるけど。
これはいいです。
入場までの一時までもがエンタテイメントという芝居は初めて観たもので、
すっかりうきうきしてしまいました。
脈絡のないモノマネもしつこいほどのハナレメネタも全てひっくるめて楽しんだ。
というかこれは祭りなのでつべこべ言わず楽しみたい。
そう思ったら難しい事はあまり考えず
素直に全てに笑ってやろうと
そういう思いで観ていました。
これは表現を変えた「水曜どうでしょう」そのもの。
ミレイさんの感想を読んで目からウロコだったのだけど
言われてみれば「松」も「築山」もどうでしょうゆかり。
ないのはぼやきと深夜バス?(笑)そしてミスター。
普通の芝居ならばめっちゃタブーだけど、
この芝居は「生の大泉洋を観る事に意義がある」と言い切ってもいいとすら思います。
私が1回目に観た日は、4割が道外からのお客様。
多分初観劇で「どうでしょうの芝居なら・・・」と足を運んだ方も多いと思います。
ちょっと私語や笑いや多かったりもしたけれど、
最初の洋ちゃんの登場での会場の沸き具合に、私も嬉しくなりました。
洋ちゃん出演の芝居を見慣れていてもぞくっときました。
ふじやんの云う「幸せな空間」は過言でないと思います。
好きだったシーンは、盗人のとろこ。
時代に流される事無く懸命に行きようとしている十郎太と
この時代だからこそ、一国一城の主となるべく野心を働かせて前向きに生きるけど
どこか人間臭いところを持ち併せている安藤(そういう表現が上手かった、たくちゃん)
と比べて
すっかり時代に翻弄されて落ちぶれた流浪人の盗人。
同じ流浪人でも自分とこうも違う二人と出会って、
救われたような気がするけれど、そう生きられなかった自分が悲しくもある。
そんな風に思いました。
きっとどこか落ちぶれた完璧でないキャラの人が好きなんです、私(笑)
そう考えるとますます最後の幻シーンは見たかったですねぇ。
せめて稽古風景の特典映像にでも入っていればいいなぁ。
時期的にドラバラ対決企画の後だったらしくて、
素足丸出しの盗人の足はとってもキレイでした。
芝居では説明がない、不思議なキャラ設定の黒龍丸と桜姫。
なんだそれ、とちょっと思ったけど、
許されるような気がするので、
勝手に「こういうことだ」と考えてみたりします。
桜姫の極端な嘘嫌い。
見た目可憐でか細い桜姫。
凛とした雰囲気はあるけど、それだけではただのお姫様然としていて
内面が伝わりにくい。
婿取りの儀でいきなり黒龍丸にびしっと言うのは唐突なので、
「芯が強い」という事を印象付けるために
「嘘をついたものは誰であろう制裁する」という設定があった。
とか。
唐突な黒龍丸の謀反
「おおきゅうなられたなぁ」と言ってるという事は、
昔から姫を知っている。
実は斎藤の陰謀にも得体の知れない存在的に関わっていたとか。
戦国時代はまだ呪術とか風水による戦略ってのが残ってたみたいだから。
平安時代の安倍清明に限った話じゃないみたいです。
姫の聖地、白龍神社に対して黒龍。
昔白と黒はひとつだったけど、
対立の末喧嘩して神様とピッコロ大魔王に分裂した。
あれ途中から違う話になった。
「ドラゴンボール」自体いろんな神話などがごちゃ混ぜだし、
蟹頭十郎太もいろんな古文からヒントを得ている節があるので
神の分裂っていうネタも出典は一緒かなぁと思ったのです。
きっとWS3と同じあれ。
話は逸れるけど、
蟹頭の髪型は地雷也を思い出しました。
蟹頭の設定とは随分違うけど、
巨大なガマガエルに乗った、髪を逆立てた忍術使いの少年です。
確かめるために検索してみたら、
地雷也と似たような伝説のお話がいくつか出て来て、
白ヘビにさらわれる黒姫の伝説というのがあるらしいです。
蟹頭はこんなところからもヒントを得ているのかもしれませんねー。
それぞれの役。
十郎太と安藤はもう言わずもがな。
あんな風に腹の底から舞台で声を響かせたら気持ちいいだろうなぁー。
口上は時々机の本に目を落としてたように見えるけど
きっと無関係な事が書いてあると思うんだけど。
普通舞台などて手紙を読むシーンでも、本当に紙に何か書いてるって事はないですよねきっと。
読んでしまったら逆に台詞飛んでしまいそう。
2人とも上手いですよね。ほんとに。
しぶい。すてき。かっこいい(笑)
頭ひどいとかでこ広いとか関係ないもう(笑)
あっ、あの2人の登場するシーン、
扉が開く時のSE、サントラに入ってなかったのが非常に残念でした。
しげちゃん・・・。
きっと、もっと殺陣やりたかったろうなぁー。
だけどこの役は他の誰も当てはまらないのでやっぱり適役なんでしょう。
実戦ではめっぽう弱いけど、
型だけやらせたら実は居合の達人なんていう設定だったらよかったね(笑)
アキちゃん。
初舞台だけど上手い。憎いですよね何やらせても上手いって。
白龍神社で助けを呼びに行く時に思いっきりジャンプするとこがあったけど、
15日にはそこで片方の草履が脱げて、
舞台中央まですっとんで行きました(笑)
次に安藤と一緒に出てくるシーンで
安藤「落ち着け(慌てるなかも)草履くらい履かんか!」というアドリブで
すいません〜っ!という台詞と共に履くんです。
袖で打ち合わせしたんだろうけど、初舞台で見事なアドリブでした。
モリ。
これがモリでなくて誰だ!って感じですね(笑)
さすがいばらのもり大ファンだったふじやんの演出です。
モリ以上にモリを演出してました。
あと法師役ですが。
あの法師は巡礼の旅という名目で四国うどん食い倒れの旅に出かけたのではないかと思います。
宮崎さん。
初舞台・・・と言うか、人前に出るお仕事自体ほぼ初めてで頑張ったと思います。
しかしやっぱりね、素人でした(笑)
台詞回しがちょっとぎこちないってものあるけど、
表情が全然芝居していなかったです。
きっと精一杯表情も芝居している気持ちだったとは思うんです。
けど舞台ってホント、よほど大袈裟に表情作らないと伝わらないんですね。
しょうがないよねーと思いつつ・・・。
オーディションの事なんて知らない人が観たら、残念だけど「?」と思ったと思います。
野村千穂さんは華添えてましたねー(笑)
舞台一ヶ月前に出演して頂くと決めた、と書いてあったけど、
それまで一体誰が老婆と侍女をやる事になってたんでしょう。
一役しかやってないアキちゃんかな。
野村さんで観てしまった野村さんしかあり得ない、と思うから面白い。
顕ちゃん。
黒龍丸はわっるい顔してましたー!!
悪役ステキです(笑)
どうでしょうだけのイメージならもろ正反対。
すごく効果的な悪役だったと思います。
オクラホマ。
足軽が客席の傍を通るんですよ。
槍を構えた河野君が本当におっかないんです(笑)
役のこなしっぷりがすごかったです。
着替えと言えば無二斎 だけど、
2人の舞台裏はもっと相当だったと思います。
早変りとかメイキングで見たいです。
影・綾姫と影・十郎太
綾姫と盗人にさらわれた役の女の子は、
苗字からしてあの人と縁だとか言う話があるみたいですけどどうなんでしょうね。
あの抱えられ方によく耐えたと思います。
そして弥七とのシーンでよく泣かなかったなぁと(笑)
あんなの大人でも迫力で怖いよ。
十郎太はカーテンコールの時に大志君だと気付きました。
蝦蟇丸。
はーん仕掛け知りたいー(泣)
バカなのでまだ分かってないです。
こんな事やあんな事なのかなぁと2つくらい思いつくことはあるんたけど。
そういう事に詳しい方いますか?(笑)
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モノマネレパートリーです。
12日
客席からリクエストが飛んで
「和田アキ子」そして「木村洋二」もう1個がどうしても思いだせない。
御前で披露の時は「世界不思議発見」
まだ慣れていないのか、
次の瞬間に「モノマネには反応しないでさくさく話を進める芝居」に戻らなければならない、
同じ舞台に立っている役者陣が
うしろを向いて方を震わせて笑っている(笑)
ようやく真顔になって芝居に戻るけど
笑いを堪えた後の顔は真っ赤。
2回目ではモノマネの時の役者さんの様子をあまり見てなかったけど
お触れのシーンでは3人はすっかり慣れた様子、
御前のシーンでは、1回目は安藤の方がぶるぶる震えていたのは目前でわかったけど
2回とも他の役者さんが笑っていたかどうかは観てなかったー。
その時沼部などはどうしていたのか非常に気になるっ(笑)
15日
「デビット・ベッカム」「世界不思議発見 坂東編」「世界不思議発見 欲情した犬に身を任せるムツゴロウ編」
御前で披露したのは「僕が中学2年生くらいの頃、毎日夕方になると流れていたシメサバのCM」
マルタケーのしめさば!
あと、12日はなかったのに、15日には無二斎が平岸天神に混じって踊ってました。
そして15日のアンコール。
鳴り止まぬ拍手がやがて一定のリズムに変り、
だんだんと大きくなる。
ふじやんが戸惑い気味に
「これは・・・出ろって事ですか? ・・・えっと」
しばらくすると舞台の照明が再び光り
奥の扉が開いて現れたのは蟹頭十郎太。
「ご来場の皆様!
今日は水曜天幕團にご来場いただきまことにありがとうございます!
北海学園在籍中から演劇を始め、
いつかはアンコールがもらえるような舞台がしたいと思っていました。
しかしそれが今日とは(苦笑)
まさか今日来るとは思いませんでした。
どうして私が出てきたかというと、何のことはない。
他の連中は全員着替えてしまったというだけです(笑)
僕でよかった。オクラホマじゃなくてよかった。」
再び来場を感謝する締めの言葉で、いつしか決めのポーズになった
ピースをちょきちょきする蟹サインで退場。
最後に。
舞台挨拶で
NACS+三輪ひとみ嬢が並んで扉の向こうに消えるところでぞくぞくしました。
何と言えばいいのだろう。
「もう終わっちゃうんですかー?(泣)」という感じ。
とにかく祭りを精一杯楽しませてもらいました。
(2003/12/19)