劇団イナダ組 03年ロードツアー
「マーブル・テーブル・トラブル」
〜脚本・演出 イナダ〜
-----あらすじ-----
平凡なサラリーマン、三上(Wキャスト・川井"J"竜輔/谷川登)
との結婚を3日後に控えたアツコ(Wキャスト・出口綾子/上田裕美)は
突然部屋に閉じこもる。
心配した同居する妹のカスミ(小山めぐみ)は、
アツコの短大時代からの親友で共に30歳の
ヨシコ(小島達子)、サトコ(山村素絵)、ハルミ(和田和美)を呼び集める。
三上は仕事が忙しくて来られない。
4人が説得しても部屋から出でこようとしないアツコ。
マリッジブルーと決め付けて騒ぎ立てる4人は、
それぞれの結婚観話に花を咲かせ始め、
アツコを説得しに来たはずか
次第に自己の抱える問題へと摩り替わっていく。
ヨシコは就職してまもなく出来ちゃった結婚をして
現在姑と夫と子供3人と暮らす。
姑の機嫌を伺ったり理解のない夫に振り回されたり
決して結婚生活に満足はしていない。
アツコに自信を持って結婚を勧められない。
サトコはバツイチ、現在は年下の夫と再婚。
二度と同じ失敗を繰り返さないよう、年下の夫との間には10の約束事がある。
しかし子供を教育するように1から10まで教えないといけない夫とすれ違い
疲れを感じていてた。
ハルミは独身、恋人もいない。
寂しさと焦りから、やたらと結婚に憧れている。
カスミは22歳の大学生。
まもなく就職を控えている。
まだまだ夢と希望が捨てられない年頃。
ふと部屋から出てきたアツコを捕まえて
なんとかソファに座らせると、
テーブルの上に置かれたアツコの携帯が鳴る。
短大時代の共通の知り合い、今野(Wキャスト・川井"J"竜輔/飯野智行)からだった。
明るく楽しくて、演劇人で自由人だけれどいいかげんな男だった今野に、
かつてアツコは憧れて、それなりの付き合いもあった。
どうして今更今野こら電話が、と問い詰められるアツコ。
今野は突然やってきた。
バイトが遅くてずっと入って無いから、風呂を貸せと上がり込んだ。
風呂を貸して、もうすぐ結婚する事を報告して、それだけだった。
優しくて真面目で年収もそれなりだけど、
面白みに欠けて取り柄は次男という事だけの三上とは対照的な今野。
それだけでアツコは部屋に閉じこもった。
ひそかに三上に思いを寄せていたカスミは激怒し、
思いに気付いていたアツコは
「でもあんたに三上さんはあげない」と言う。
姉妹は激しくぶつかり合い、やがて胸の内を明かしあう。
今更今野に揺らいだ訳ではないけれど
相変わらずの今野を見て昔の自分を思い出し
愛していない三上を選んだ自分が悲しくなった。
けれど三上と結婚する。
ありきたりな人生計画を語るアツコ。
カスミは「諦めないで、ファイト!」と自分に言い聞かせるように叫び続ける。
暗い部屋で、アツコの様子を伺っておろおろする三上。
扉が開くと、
まばゆいウエディングドレスに身を包んだアツコが登場して微笑んだ。
---END---
-----感想-----
(私の観た回のWキャスト役者さんは、
三上:川井"J"竜輔、アツコ:出口綾子、今野:飯野智行 でした)
公演パンフレットより抜粋
作、演出 イナダさんのコメント
ご覧になって、若いと思うか、忘れてしまった何かを思い出すのか。
あなたはどちらでしょう。
私はどちらでもなかった。
カスミが叫び続ける理想と
アツコが決めた「諦め」は
多分殆どの主婦の方の心の中に合理とも矛盾ともつかないまま
混在しているはずだ。
私の中ではどちらもずっと葛藤し続けている現在の話。
そう思いました。
このお芝居のように口に出して自他共に認めてしまったら
守っているものが全て壊れてしまう。
そんな恐れを持っているはずです。
「それを言われると・・・」と
隠していたものを突きつけられたようで。
本当に痛いというのはこういう事を言うのかと思ったくらいです。
どうか旦那さんの愚痴ばかりこぼしている主婦を責めないで下さい(笑)
もがいている主婦には、
狭い家庭の中こそたった一つの世界です。
そこから生まれるもどかしい思いを吐露するには旦那の愚痴くらいしかないかもしれません。
旦那の愚痴の奥にしまってある
本当の事まで曝け出してしまうのは非常に危険な事なのです。
だからうわべだけの愚痴を言って鬱憤を晴らそうとするのです。
ヨシコが何か言いたげにしながらも口ごもるのも、
そんな気持ちからじゃないかと思いました。
ヨシコを爆発させたら、
部屋に閉じこもるくらいでは済まないと・・・思いました。
私がものすごく共感したのはサトコです。
詳しく書くとそれこそ旦那の愚痴になっちゃいますが、
本当にあんな感じです。
最初は驚きの連続でした。
今でこそ先を読めますが。
気付けば結婚9年目にさしかかろうとしています(笑)
私はcm単位のものさしを、旦那は尺単位のものさしを使っている。
それくらい価値観が違って近づけるのに一苦労です。
多分一生同じものさしになる事はないと思うくらい。
旦那も「あいつのものさしはおかしい」と思ってると思いますけど(笑)
ハルミの気持ちだって分かります。
恋の行き着く先が結婚だとしても、結婚の行き着く先は恋ではない、
と考えたら簡単かもしれません。
簡単な話だけど、
やっぱり体験しないと分からないものです。
孤独か孤独でないかを恋をしているかしていないかで区別するなら、
結婚しても多くの人は孤独でしょう。
なら主婦だってハルミと同じです。孤独です。
(恋を基準に考えるなら、ですよ)
カスミは何度も自分にファイト、ファイトと言い聞かせる。
自分が叫ぶ理想が叶わないものだと分かっているから。
姉を責めるのは、
姉が結婚に夢を見出してほしいから。
その姿を見て、自分だってそうして構わないと思いたいから。そう思いました。
夢を捨てきれない若いカスミには、
姉の選択を見るのは辛すぎたのかもしれません。
けどアツコの決断も悪くはないと思います。
カスミの言うとおりズルイ選択なのかもしれないけど、
一生を共にする人を選んだのです。
勇気のいる決断です。
アツコはこの先、何があっても自分の選択に自信を持って強く生きられる。
そんな気がします。
登場人物の全ての女性の心理と問題は
結婚している女性のほとんどの方の心理に当てはまるものだなぁと思いました。
いちいち、突き刺さるんです(笑)
なんで分かるのだろうイナダさんは。
マープル'98のビデオを持ってるんですけど、
買って観た頃はよく分からなかったんです。
最後のウエディングドレスのシーンが特に。
今観たら、
アツコの気持ちがあっさり分かるんですが。
多分ね・・・
いやーマーブルの感想を書くとどうしてもリアルぶっちゃけになってしまって
何回も書いたり消したしする羽目になってるんですけど(笑)
(続き)
多分ね・・・
自分がアツコとおんなじような気持ちで結婚したという事を
その時は認めたくなかったんですねきっと。
以前にたくちゃんがラジオの恋愛談議で
「尊敬している人じゃないと好きになれない」てな事を言ってたんですけど
まったくその通りですね(笑)
結婚も、決して楽ではないかもしれないけど
尊敬できる人・・・
そうでなれけば一生好きでい続ける事は難しいと痛感する今日この頃です。
「そもそもそんな熟年夫婦いないだろ」と思う方もいるかもしれません。
ところがいるんですよ。
何年か前に、家出してうちに転がり込んだ母が
「でもお父さんのこと好きなの」と言ってたんですよ。
まったく尊敬に値する夫婦です。
これは結婚前の女性にもずしんとくるお話だったと思うけど
既婚女性にもなかなかのものです。
私のような人間にとって、
結婚て一体なんなのでしょう。
もちろん今は楽しくて幸せですけど、
これはもう答えは出ません。
いや、家族でいる事が他にあり得ないくらい当然の事になって
ひとつの「家」を作ったなぁと実感できる老年期に
答えはあるのかもしれません。
しかしそれまで待って実りある人生だったと思えればいいんですけど。
最後に「あーあ」と思うのは卑怯かもしれない。
もっと自分自身が充実しないと。
いつもまんまと芝居に影響されてます。
結婚の理想と現実・・・。
あのお芝居を観て更にこの感想を読まれた方は
結婚に恐れをなしてしまったかもしれません(汗)
しかし私はかなりひねくれた結婚観をかなり若い頃から持っていて
ひねくれたまんま結婚してしまったので、
きっと何か見失ってます(笑)
自分の結婚観と若い頃の捉われを書き出して見たけど、
くだらない上にものすごいネガティブで気分悪くなってやめました・・・。
とにかく
「それはアンタ素敵な若人とは言えないわね」という若い頃でした。
きっと今まで素敵に生きてきた人なら大丈夫です。
素敵ったって、別に特別な事じゃなくていいと思うんです。
好きな事をいっぱい見つけていっばい遊んでいろんな事を知る。
「これだ!」ってものが見つからなくても、
きっとポシティプな結婚生活が出来ると思う。
アツコも夢を持って挫折して諦めて結婚して
「夢はもう見ない」と言ったけど、
希望はあるんじゃないかな。と。
そう思いたいです。
余談ですが、今年は30がキーワードの年でした。
モリプロのFEVERも30歳の男達。
マーブルの女達も30歳。
NACSの過半数は今年30になり、
便乗して「TEAM-NACS FAN OVER30」なんて同盟も作りましたvv
三十歳・・・と言うより30代の、30代による30代のための年という感じでした。
30代クライシスと30代の悩める胸の内、
そして30代の面白さと楽しさと可能性。
30代ってこんなに複雑なお年頃だとは思ってもみなかった。(笑)
二十歳になる時には特に何も感じなかったのに。
20代より敏感に生きてるとさえ思えてきます
30代って面白みのない響きだけど、実際はそうでもないみたいですよ(笑)
(2003/12/25)