TEAM-NACS 第9回公演 「ミハル」 〜作・演出 佐藤重幸〜
観劇レポ <感想編>

 

まずはストーリーに書かなかった小ネタをいくつか。
岡田がコミヤの過去を言い当てるシーンで
コミヤの朝食→雪見大福、部活→アマチュア無線、趣味→カブトムシの孵化・・・だっけ?
出身→ヨコハマと言っているが、青森県なんとか郡(聞き取れなかった)の横浜町と言い当てられて、津軽弁でうろたえる。

キノコがナガミネに「そんなに近づくな」「近寄ってない!」
安藤がキノコに双眼鏡を貸すシーンで「離れちゃってますけど」
などのお約束とか。

キノコがなかなかガウンを着ないので、岡田が「着るか着ないかどっちかにしてください」と言うとガウンを投げ捨てられ
「着ないんかい!」

ナガミネがE・Tで現れた時に、岡田とお約束の「人差し指あわせ」シーンをしたり。

ナガミネの告白シーンで、徐に歩き出した殺人者ナガミネをコミヤが怖がって一歩退いて道を開けたら
ただハンバーグをひっくり返しに行っただけだった、とか。

キノコの転身の理由を当てるシーンで
「娘の目の前で撃って・・・」っていうのはESCAPERのハリス・ファーストの話だよなぁ、とか
整形を「もっといまどきの二枚目にすればよかったのに」と岡田に突っ込まれたりとか。
田中のメモの絵が、初日はキン肉マンで楽日がラーメンマンになってたりとか。

ハプニング系では、
初日に、流しそうめんを食べるキノコがマジむせしたり
楽日の最終公演で、ナガミネがE・Tの衣装を上だけ脱いで、ハンバーグを作るために頭にバンダナをかぶろうとするシーンでなかなか被れなくて投げ捨てちゃったりとか。
(初日はすんなり被ってた)

あと、楽日にたくちゃんが台詞間違えてました。(粗探し粗探し)
「田中を挙げて警察を辞める」が
「警察を辞めて田中を挙げる」になっちゃってた。
洋ちゃんは初日カミカミだったけど、楽日は大丈夫。
そしてナガミネがスリッパで岡田をしばくシーン、初日は肩に当たってたのでそういう演出なのかと思っていたら、楽日ではちゃんと頭にHITしてました。

楽日の遊びでは
コミヤがアンパンを渡すシーンで
仕方なく二人がアンパンにかぶりついてから
コミヤが「腐ってますけど」と呟いたり

キノコがベッドで無意味体操をしている時に、ベットの端に股間をこすりつけて、そこの匂いをかいでたんだけど(笑)
それは全公演あったんでしょうか・・・?

遊びかどうか分からないけど、
流しそうめんを組むシーンで、コミヤが
「これなんだか分かります?竹ですよ竹。本物の竹」としつこく言ってたり。

余談ですが楽日はなんと舞台挨拶がありませんでした。
何故なんでしょう。



なんと言っても特異なキャラでどうにもこうにも目を奪われてしまったのが、
モリのナガミネと顕ちゃんのキノコ。
初登場のシーンであっけにとられたのは言うまでもありません。

しかし二人とも多少痛々しかったです(泣)

モリには「今までとは違った役柄を」としげちゃんは思っていたようですが、
確かにある意味今までにない扮装キャラ。
だけどハイテンション芝居は健在でした。
そしてお調子者の役だったので意図的に「浮く」芝居だったんでしょう、多分(汗)。

キノコは
「もし『変態ケンちゃん』が復活したらこんな感じなんだろうなー」と思いました。
腰振ったり、怪しげなポーズをふんだんにとったり。
水魚のポーズというフィニッシュ業など、わやでした。
うつぶせになって反り返って足首を持つんですが、その弓反り状態で腹筋だけで飛び跳ねて更に一回転してましたね。お腹真っ赤でした(笑)
キノコは顕ちゃんのハマリ役だとは思うけど、
ちょっとやりすぎ感が強いように思います。



でもこういった小ネタやキャラ設定は好きです。
モリのお芝居にもふんだんに小ネタはあるのだけど、それとはまた一味違っていて面白かった。
(どうしてもモリ作品と比べてしまいますね・・・)

キャラ設定といえば、洋ちゃんの岡田役。
実直な青年警察官という今までにない役柄が新鮮でした。
意外とハマってましたよ。
「先輩」と連呼するあたりは単純に好き(笑)



そして、今回公演前からタウン誌などで明かされいた
「視覚・聴覚・嗅覚に訴える」芝居とは。

やっぱり流しそうめんとハンバーグ舞台でリアル調理の事だったんでしょうか。
(顕ちゃんのオナラも含まれていたそうですけど)

これには実にやられました。

お芝居の始まる時間はとても微妙な時間帯。
ゴハンも食べられずに空腹で観劇している身には堪えます。
2回の観劇とも、お腹が鳴りました(笑)

しかしこの仕掛けは楽しかったです。
リアルセットのワンシチュエーションモノで演出も派手じゃない舞台にちょうどよいアクセント。
「ちょっと小技が利いている」そんな感じでした。
コミヤの笛も好きです。

そしてこれは演出意図だったのかどうかは知りませんが、
5人揃って望遠鏡と双眼鏡で向かいのホテルを張り込むシーン、レンズが客席を向いているので
まるで自分達の客席を、観客を「ミハル」行動のようでちょっとばかしドキドキしました(笑)
それとは逆に、田中がずっと1803号室を覗き見していたと分かった時、
観客である自分も1803号室を覗き見ている立場だったのだと気付いて思白かったです。

しげちゃんのこういう細かい仕掛けは面白いですね。
実際に田中役の人間は舞台上にいないのに、
前半の張り込みという設定と、後半のコミヤを仲介役にしてコミヤの口から田中の様子が語られる事であたかもそこにいるようにリアルに感じました。
お芝居ではよくある手法なんでしょうけど。
そんなに観劇の回数を重ねている訳じゃないのでころっと騙されました(笑)


次にお芝居とは全く関係の無い事での感想。

しげちゃん制服だふだぶでした。
サタフィーで、舞台が迫ってからかなり痩せたと言っていたので、衣装合わせの時とステージとで
体格が随分違ったんでしょうねー。
あまりに細すぎました。

そしてなんと言ってもこれです。岡田と安藤が上着を脱ぐシーン!
ホルスター姿の、あまりのかっこよさにかなり喜びました(笑)
(最初日記に「ガンホルダー」と書いたのですが、自信がないので調べたところ、
本当は「ホルスター」。ガンホルダーとは銃を立てかけるスタンドのようなもの。)

そして岡田の飛び蹴りがキレイに決まっていたのに惚れ惚れしました。







それで肝心のストーリーの方ですが、



実は納得いきませんでした。



最初から先が読めちゃったせいもあったと思いますが、
「んん?」とひっかかる事が多くて。



なぜ安藤は現金の引渡しに田中を呼びつけてそこで殺さなかったのか?
なぜわざわざせ一度泳がせて張り込みなんてしたのか?

「殺す」という決心は決して固いものではなかった事は分かります。
わざわざ張り込みという手段に出れば、
岡田が一緒に行動してくれる事を見込んで
もしかしたら岡田に見守っていて欲しかったのかもしれない。
止めて欲しかったのかもしれない。

それを観客が行間で読み取るべき感情なのだと言わればそれまでだけど、
「張り込み」=「ミハル」です。

張り込みという出来事自体が、
お芝居のタイトルになるほどの重要な話の軸なのです。

その「張り込み」の意義が薄れた事で、
最後の展開についていけなくなってしまいました。



そして、岡田の超能力は本当に必要だったのか?



しげちゃんが「サイコサスペンス仕立て」にしたかったのはよく分かる。
その題材は好きです。

でも、キノコが
「あの銃はニセモノだ」と断定した時点で
超能力の存在意義は・・・。

でも、岡田が奇妙な能力のせいで辛い思いをしてきて、
それ故に人一倍人の痛みが分かる人物に描かれていたのかなぁと。
そう思うと悪くない設定のような気もします。



キノコが後半でだんだんヒートアップしていくのも最初は分からなかったのですが、
細かくストーリーを書き出していったらちょっと納得いきました。
昔の自分に似ている安藤に感情移入していったんですね、多分。
観劇している時に気付きたかった。
単に私がバカなんでしょうか(笑)



そしてくどかったです。
同じ話の繰り返しが多くて、
中盤ちょっと飽きるのです。
後で思い起こしてもどのセリフがどのシーンだったのか、混同していて
ストーリーの書き起こしの時に悩みました。
これは観劇には直接関係の無い事なんですけど。




こだわりすぎかも知れないけど、

今回は脚本家自身が「ストーリー重視」と言っていたくらいです。

モリのNACSのように、ストーリーというよりは
音楽・照明などのライブ感でみせるお芝居(と言い切るのも勇気が要りますが)
じゃなかっただけに、

ストーリーに疑問を感じてしまったことが少々痛かったです。



話の題材は、私はものすごく好きな路線です。
しげちゃんの発想や視野もすごく面白いと思います。
それなだけにちょっとばかし残念でした。



そうそう



あの大金の行方はどうなったんでしょう。



そして岡田は実は登場人物の中で一番いろんなものを背負って生きていくように思います。
岡田には何かセカンドストーリーがありそうだな、と思いました。